カッコウはコンピュータに卵を産む〈下〉

カッコウはコンピュータに卵を産む〈下〉


読了。
純粋に小説として楽しい本でした。
1980年代後半のハッカー追跡を描いたノンフィクション。一見すると無味乾燥としたコンピュータ用語ばりばりの本かと思いきや、きっかけはたったの75ドルの電話料金というキャッチーな出だしから始まって、動いてくれないお役所(アルファベットで3文字のあそことかあそことかあそこですが)、ハッカー追跡なんてやってないで仕事しろとのたまう上司とか、事件が解決しても犯人について何も教えてくれないアルファベット3文字のあそことかといった(社会人なら)いかにも頷ける社会描写や、ときおりまじる私生活の様子など、最初から最後まで一気に楽しく読めました。
訳者あとがきでも書かれているように、コンピュータやネットワークに詳しくない人ほど楽しく読めるかもしれません。セキュリティに携わる仕事をしてると、あーこういうのあるよねーとか、うちのシステム大丈夫かとか、余計なことばかり考えてしまって、逆に本に入っていけないかもw


わかりきってはいるけれど忘れがちなこととして、ネットワークは利便性を高めればセキュリティが甘くなるし、セキュリティを向上させれば利便性が損なわれる、ということがあります。
この本の中でも繰り返し出てくる言葉ですが、セキュリティ担当・・・というかWEBアプリ開発者としては肝に銘じておかなければならない言葉ですよね。
WEBアプリには2種類の「客」がいて、ひとりはWEBアプリを提供する企業なり団体なりであり、もうひとりは実際にそれを利用するユーザーなわけです。このふたつの客を天秤にかけつつ、どちらも満足できるものを作り上げるのがSEのお仕事・・・のはずなんですが、双方の視点を持てるSEが今の現場にはあんまりいない・・・と結局愚痴になっちゃいましたが、古いのんびりした時代の残滓といわず、今の時代に読んでも十分ためになる良い本でした。